秋は信州の鎌倉・塩田平と別所温泉、そして松茸

長野 #グルメ #仏閣 #温泉郷 #神社巡り #紅葉
2022.10.18

長野県東部、上田市は“真田の里”として知られていますが、鎌倉時代までは真ん中を流れる千曲川の対岸「塩田平(しおだだいら)」が信濃の中心地でした。

特に鎌倉時代は幕府とのつながりが強く、幕府の要人北条義正が塩田城を築き、“信州の鎌倉”といわれるほど繁栄しました。
江戸時代に入り、真田幸村の父真田昌幸が上田に城を構えてからは、塩田平はその役割を終え、衰退していきました。

しかし、現在でもその栄光の歴史は、神社仏閣の中に数多く遺っています
江戸時代以降は静かな里山になった塩田平には、名湯別所温泉もあり、いつでもゆったりとした時間が流れています。

特に秋はいちばんのおすすめです。紅葉が美しく、なんといっても“松茸”が訪れる人々を歓迎してくれます

美しく美味しい秋の「塩田平」。イチ押しの観光地です。

塩田平、別所温泉の古刹、神社

塩田平の守り神「生島足島神社」

塩田平に点在する神社や古刹の中で最も古くからあるのが「生島足島神社(いくしまたるしまじんじゃ)」です。

創建年代は不明ですが、平安時代にまとめられた法令集「延喜式(えんぎしき)」にその名前が記されています。
神社名は祭神である“生島大神(いくしまおおかみ)”と“足島大神(たるしまおおかみ)”に由来します。

生島大神は万物に生命力を与え、足島大神は万物に満足を与えるといわれている神様です。

大きな池(神池)に造営された島(上島)内に建立されている朱塗りの本殿(本社)は、1940年(昭和15年)に再建されたもので、長野県の県宝に指定されています。

神池と周囲の森、朱色の本殿のコントラストが美しく、特に秋の紅葉時がおすすめです。

生島足島神社 基本情報

住所
長野県上田市下之郷中池西701

電話番号
0268-38-2755

開門時間
8時30分~16時30分(授与所)
散策自由
年中無休

URL
https://www.ikushimatarushima.com/

弘法大師が創建したとされる「前山寺」

「前山時(ぜんさんじ)」は、812年空海(弘法大師)により創建されたといわれています。
本堂は1331年にこの地に移されたものです。

現在の建物は再建されたものですが、茅葺き屋根の美しい姿をしており、荘厳な雰囲気を醸し出しています。

室町時代に建てられ、今もその姿のまま佇む三重塔は、高さ19.5メートルで、柿葺(こけらぶき)になっています。

窓や扉がなく未完成と考えられていますが、その姿は大変美しく、周りの自然と調和していて「未完成の完成の塔」といわれます
三重塔は国の重要文化財に指定されています。

前山寺 基本情報

住所
長野県上田市前山300

電話番号
0268-38-2855

開門時間
9:00~16:00
年中無休

入山料
大人200円、高校生100円、小中学生50円

URL
https://www.zensanji.info/

善光寺と向き合う「北向観音堂」

別所温泉にある「北向観音(きたむきかんのん)」は、本堂の「北向観音堂」が北を向いている珍しいお寺です。

長野市にある「善光寺」が南向きに建てられていて、それに対峙する形で建てられたといわれています。
善光寺は未来往生(本尊阿弥陀如来像)を願い、北向観音では現世利益(本尊:千手観音像)を祈願します。
一方だけでは“片詣り”だそうで、善光寺と北向観音両方にお詣りするほうがいいとされていますよ。

「北向観音」は平安時代初期の825年に慈覚大師(じかくだいし/比叡山延暦寺座主)によって創建された古刹です。

「北向観音堂」の前に大きな桂(かつら)の木があります。
樹齢1200年もの老木で、別所温泉に逗留していた直木賞作家川口松太郎が、宿の窓からよく見えたこの木をモチーフに小説「愛染(あいぜん)かつら」を書いたことで一躍有名になりました。

小説「愛染かつら」は、主人公の若い看護師と病院長の息子が桂の木の下で愛を誓うという恋愛物語です。1938年に映画化され、大ヒットとなりました。

それ以来“縁結びの霊木”として大切に保存されていて、「愛染桂」と呼ばれています
長野県の天然記念物に指定されています。

北向観音 基本情報

住所
長野県上田市別所温泉1666

電話番号
0268-37-1234

開門時間
7:00~16:00(季節によって前後あり)
御朱印・御守の授与は8:00〜16:00

拝観料
志料

休観日
年末年始

URL
https://www.kitamuki-kannon.com/kannon/

「北向観音」の本坊、「常楽寺」

「常楽寺」は「北向観音」の本坊として825年に北向観音堂と同時に建てられました。
本堂は茅葺き屋根で、2003年の修復工事の時、建立当時の建築様式に改められて再建されました。
天台宗の別格本山になっており、格式高いお寺です。

本堂左側の道の奥、杉木立の中に古い石の塔が5基立っています。
その真ん中にある他より大きな堂々とした塔が、国の重要文化財に指定されている「石造多宝塔」です。

平安時代初期に金色をした千手観音像が現れたといわれているところで、この観音様を安置するために「北向観音堂」が建てられました。
もともとは木製でしたが、鎌倉時代に焼失したため現在の石製に作り替えられました。

常楽寺 基本情報

住所
長野県上田市別所温泉2347

電話番号
0268-37-1234

開門時間
日中随時

入山料
100円

休観日
年末年始

URL
http://www.kitamuki-kannon.com/jorakuji/

国宝“八角三重塔”がある「安楽寺」

別所温泉にある古刹です。「安楽寺」と同じ頃創建されたお寺で一時荒廃してしまいましたが、鎌倉時代には臨済宗(りんざいしゅう)の禅寺として再興されました。

鎌倉幕府の庇護を受け鎌倉の建長寺と並び称されるほどの名声を得ました。
しかし、北条氏が滅亡後は衰退し、力を失ってしまいました。
現在は曹洞宗(そうとうしゅう)に改宗されています。

しかし、境内には鎌倉時代の文化遺産が多く残り、当時の面影を残しています。

境内奥に八角形の三重塔がそびえています。
鎌倉時代末期に建てられたもので、木造の八角三重塔は全国でもこのひとつしかない貴重なものです。
この塔は長野県で最初の国宝に指定されました。

ほかにも鎌倉時代に作られた木造惟仙和尚坐像(木造しょうこくいせんおしょうざぞう)と木造恵仁和尚坐像(ようぎゅうえにんおしょうざぞう)が、国の重要文化財に指定されています。

崇福山 安楽寺 基本情報

住所
〒386-1431
長野県上田市別所温泉2361

電話番号
0268-38-2062

拝観時間
年中無休
3-10月:8時-17時(最終入場16:45迄) / 11-2月:8時-16時(最終入場15:45迄)
※行事などにより変更になる可能性あり

<有料エリア>
八角三重塔 など

拝観料
大人300円、小中学生100円

URL
http://www.anrakuji.com/

別所温泉と松茸

1900年前に発見された古湯、別所温泉

塩田平の西側に位置し、塩田平から続く丘陵地帯に別所温泉(べっしょおんせん)があります。

その歴史は古く日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征した際に発見したといわれています。
今から1900年以上も前のことです。

別所温泉は塩田平が北条氏によって治められ、“信州の鎌倉”として栄えていた鎌倉時代、上田城を拠点とした真田藩が統治した江戸時代、そして現代まで、信濃の名湯として賑わい続けています。

1918年(大正7年)に村民出資の「花屋ホテル」が開業し、また上田からの鉄道も1921年(大正10年)に開通してからは、その名を全国に知られるようになりました。

泉質は弱アルカリ性の単純硫黄泉で、湧出口で湯温が51℃あり、湯船では源泉そのままでちょうどよい温度になっています(季節や旅館によって多少変わるようです)。
万病に効くといわれているほどさまざまな病気やけがに効能があります。

別所温泉は江戸時代以前より複数の外湯があり、共同で使われてきました。

その名残として現在でも「石湯」「大師湯」「大湯」が外湯(共同浴場)として営業しています。
入湯料は150円〜200円で、地元の人だけでなく、観光客も利用できます。

外湯 基本情報

真田幸村の隠しの湯「石湯」
営業時間
6:00~22:00

定休日
第2・4火曜日

入浴料
150円

慈覚大師ゆかりの湯「大師湯」
営業時間
6:00~22:00

定休日
第1・3木曜日

入浴料
200円

木曽義仲ゆかり葵の湯~北条氏ゆかりの湯「大 湯」
営業時間
6:00~22:00

定休日
第1・3水曜日

入浴料
200円

別所温泉観光協会
電話番号
0268-38-3510

URL
http://www.bessho-spa.jp/

秋の塩田平は紅葉と松茸

塩田平・別所温泉は秋が最も美しく賑わう季節です。
自然豊かな里山は紅葉で彩られます。それはもちろん美しいのですが、それ以上に魅惑的なのが“松茸”です。

長野県は岩手県に続いて全国第2位(え、岩手県が全国第1位、それも53%ものシェア!2017年調べ)で、シェアは29%あります。
その中でも塩田平の周辺は長野でも有数の産地です。

9月中旬から10月下旬までのシーズンは、野沢温泉周辺を中心に10数軒の“松茸小屋”が出現、松茸づくしの料理が味わえます

ただし、年によって松茸の当たり年と、ハズレ年があります。
10年ほど前に「採れています」という宣伝文句につられて出かけてみたものの、ひどいハズレ年だったという苦い経験があります。
ハズレ年と当たり年では出て来る松茸の量が違います。でも価格は同じでした。ご注意を。

まとめ

いかがでしたか。塩田平の魅力が分かっていただけましたでしょうか。

紹介したほかにも国の重要文化財“中禅寺薬師堂”のある「中禅寺(ちゅうぜんじ)」、塩田平繁栄の象徴であった「塩田城跡」や「大湯薬師堂」「別所神社」など古刹、神社があります。

別所温泉には、江戸時代から続く老舗宿や大正時代に創業し今なお当時の建物(登録有形文化財)が残る宿(「花屋ホテル」)など、魅力的かつ快適な宿がそろっています。

秋は旅館でも松茸料理が味わえます。
“信州の鎌倉”。私のお気に入りの場所です。