攘夷バカと釣りバカを育んだ海辺の町・品川穴場めぐり

東京 #台場 #品川舟だまり #坂本龍馬 #釣りバカ日誌
2022.01.26

旧東海道品川宿周辺には幕末の攘夷運動の名残りの地が数多く点在しています。このうち高杉晋作・坂本龍馬の足跡を中心に辿り、また、もうひとつ品川宿周辺の隠れた「聖地」である、映画『釣りバカ日誌』の舞台・品川船溜まりを紹介します。

東京・品川。
今ではすっかり都心の一等地になってしまった品川ですが、浮世絵「東海道五十三次」にも描かれているように、かつては江戸の郊外にある海辺の町でした。旧東海道品川宿の周辺や近郊には、そんな品川の昔の面影を残している場所もあちこちに残っています。
海辺の町・品川を舞台として幕末に活躍したバカヤロー共、そして大都会に変貌しつつある昭和の品川で活躍したバカヤローの足跡をたどる、小さな旅をしてみませんか?

品川むかし語り

江戸時代、東海道で江戸を出て最初の宿場が品川宿であったことはよく知られていますが、当時の品川宿がどこにあって、どんな所だったかはあまり知られていません。
歴史的に見ると、遅くとも鎌倉時代初期には既に物流拠点である港町(品川湊)としてたいへん繁栄していたことがわかっています。ただその中心地は現在の品川駅よりは南、目黒川の河口近辺でした。江戸時代、東海道の品川宿があったのは、京浜急行北品川駅から青物横丁駅のあたりまでです。
このエリア周辺には、海と東海道と共に発展した品川の歴史の名残りがあちこちに残っています。

見逃せない! 攘夷志士たちの歴史スポット

焼き討ちと名作映画

相模屋は品川宿で屈指の遊郭で、一般には土蔵によく使われている海鼠塀(漆喰に瓦を埋め込んだもの)の外壁が特徴的なことから「土蔵相模」と呼ばれていました。この店は幕末、取り締まりの厳しい江戸市内に入れない攘夷志士たちの隠れ家となっており、中でも過激な活動家として知られていた高杉晋作や久坂玄瑞たちがここに潜伏した後、近くの御殿山に建設中だった英国公使館を焼き討ちしたことで知られています。
また、その逸話と古典落語『居残り佐平次』を元にして作られた日本映画屈指の名作『幕末太陽傳』の舞台もこの土蔵相模でした(ネタ元の『居残り佐平次』も品川宿で一番の人気妓楼を舞台としているので恐らくは土蔵相模をイメージしていたかと思います)。
残念ながら今は相模屋は残っておりませんが、この周辺は品川宿の面影を遺す街並みが続いています。

アクセス

相模屋(土蔵相模)跡
東京都品川区北品川1-22-17
京浜急行本線 北品川駅 徒歩6分

若き日の龍馬の迷走

京浜急行・立会川駅を出るとすぐに、幕末最大の有名人・坂本龍馬の銅像が立っています。ここは江戸時代、土佐藩の下屋敷だったのです。時はちょうどペリーが東京湾の入り口にあたる浦賀に来航した頃でした。二十歳頃の龍馬は、この土佐藩下屋敷で異国の船の来襲に備えて造られた「浜川砲台」を守る務めについていたのです。
後に開国派の思想家として知られる龍馬ですが、この頃はまだ「異国の船を武力で撃退しよう!」と、過激な攘夷思想を語っていたそうです。
土佐藩下屋敷は広大な敷地を持っており、駅から少し離れた立会川舟だまり近くの浜川公園周辺が、屋敷内に建設された浜川砲台だったようです。公園内には復元された浜川砲台の大砲が展示されています。

アクセス

坂本龍馬像(北浜川児童公園)
東京都品川区東大井2-25-22
京浜急行本線 立会川駅 徒歩1分

アクセス

浜川砲台大砲(復元)(浜川公園)
東京都品川区東大井2-26-18
京浜急行本線 立会川駅 徒歩4分

近代化と攘夷のせめぎ合い

土佐藩がペリー来航に戦々恐々としていた頃、もちろん江戸幕府も上を下への大騒ぎになっていました。開国を要求したペリーに対して幕府は、翌年改めて回答することを約束しましたが、ペリーが一旦引き上げた数か月の猶予期間を利用して急遽造られたのが、江戸湾内8ケ所(未完成のものも含む)にある、砲台を備えた西洋式の要塞です。これらは品川台場と名づけられました。いわゆる「お台場」です。

アクセス

台場小学校(御殿山下台場砲台跡)
東京都品川区東品川1-8-30
京浜急行本線 北品川駅 徒歩7分

歴史に想いを馳せてひと休み

せっかくここまで来たのですから、食事にもこだわってみたいものです。
お勧めは、旧品川宿の南端近くにあるお蕎麦屋さん「そば会席 立会川 吉田家」。幕末・安政時代には既にお店があったという記録が残っている老舗です。
ですが、歴史があるお店というだけなら他にもあちこちに残っています。その中で特にこのお店が注目に値するのはお店の歴史だけではなく、そのメニューです。ここでは江戸文化を代表する「そば切り」(江戸時代中期に普及し、現在一般的に食べられている、細い麺になった蕎麦のことです)だけではなく、そば切り以前に一般的だった「そばがき」が頂けるのです。

アクセス

そば会席 立会川 吉田家
東京都品川区東大井2-15-13
京浜急行本線 立会川駅 徒歩5分
営業時間(2021年12月現在)
平日11:30~16:00(ラストオーダー 15:30)
17:00~20:00(ラストオーダー 19:30)
土日・祝日
11:30~20:00(ラストオーダー 19:30)
お店HP https://www.soba-yoshidaya-yokohama.com

まとめ~そして、バカヤローの歴史は続く

幕末、欧米との衝突の最前線となり、攘夷バカたちの活躍の舞台となった海の町・品川ですが、今ではこうして当時の面影を探さなければなりません。当時は海辺にあった東海道も相次ぐ埋め立てのためにすっかり陸地の小道になり、品川浦の海は人工島や京浜運河になっています。
ですが、近く昭和の時代にも品川の海を舞台に活躍していたバカヤローがいました。映画『釣りバカ日誌』の主人公・浜崎伝助です。映画の設定で伝助の住まいがあったのは、この「品川浦舟だまり」の目の前です。場所は前述の相模屋や台場小学校のすぐそばです。街並みは映画の時代と変わっていますが、今でも釣りバカたちを待つ釣り船が停泊しているこの光景は昭和のままです。
そしてそれは、遥か昔から続く海の町・品川の姿なのです。

アクセス

京浜運河 品川ふ頭橋
東京都 品川区 東品川5-9
りんかい線・東京モノレール 天王洲アイル駅 徒歩1分

アクセス

品川浦舟だまり
東京都品川区東品川1-7-1
京浜急行本線 北品川駅 徒歩7分