呉市にある入船山記念館は、大和ミュージアムやてつのくじら館、アレイからすこじまなどの呉観光スポットにも近く、歴史を感じられる場所です。文化施設である呉市立美術館と隣接しており、趣のある赤レンガの通りが優雅な佇まいを残しています。
ゆったりとした通りにあり、門から入る時にはまるで別荘のような高貴な雰囲気たっぷりの入船山記念館。アートが薫る美術館ともコラボして、1つの芸術品のようにも見えるでしょう。素敵な外観はもちろん、実は内装も凝った造りになっております。
そこには呉の歴史的背景が関わっており、建物造りにも大きく影響しているようです。呉の歴史を読み取りながら、高級感がありモダンな入船山記念館の内部を探検していきましょう。
目次
入船山記念館とは?歴史にも迫る!
入船山記念館は、はるか昔の飛鳥時代からその歴史を刻んでいます。広島県呉市“呉浦”の総氏神である「亀山神社の鎮座地」とされていました。
三方を山に囲まれ軍港用地として適所である入船山は、明治時代になると、防御に優れた土地として「呉鎮守府司令長官官舎」として利用されるようになったのです。
国の重要文化財
艦艇の入出港や生産活動の拠点として都合が良く適していた“呉浦”は、鎮守府の設置場所として選定されました。
そして、明治22年に呉の海軍鎮守府が開庁。“呉浦”の亀山神社は別の場所に移動し、その跡地に「軍政会議所兼水交社」が建てられ、後に「行在所」となります。明治25年からは「呉鎮守府司令長官官舎」として活用されています。
ただ、明治38年に不測の芸予地震が起きたことで建物は大きな被害を受けます。これにより建物は改築され現在に至るのです。改築時にイギリス様式を兼ねた造りとなりますが、後に時代の流れでその外観や内装は変化します。
昭和20年に連合国軍の司令官舎になると、建物内外に白ペンキが塗られ、床にリノリウムを貼るなど、内装にさまざまな改造が行われました。
そして、昭和31年に日本に返還された後は、その役目を終えます。平成10年に国指定の重要文化財となり、長官官舎だけでなくその周りの文化財も歴史を物語る建造物となりました。趣のある建物は積み重ねた歴史があるからと感じられるでしょう。
市街地の鎮守の森
入船山は独特な長官官舎の造りや趣も素晴らしいのですが、その周辺の建物や環境も素晴らしいものです。
緑豊かな木々が美しく配置され、長官官舎に向けての道のりが小高い山になっている様は、まるで小さな森と言えます。市街地の中からだと外観は緑に囲まれて分かりにくく、ひっそりと佇む穴場的な存在です。
呉市内の大通りからすぐで、小高い坂を上ると豊かな緑のゾーンに遭遇する入船山。ヒミツの森のオアシスに来たかのような雰囲気は、ここに建物を配置した歴史を思うとなるほどと納得できます。
旧呉鎮守府司令長官官舎の特徴
旧呉鎮守府司令長官官舎は「和洋併設型住宅」で、和室と洋室のコラボが印象的です。明治・大正時代に活躍した建築家の櫻井小太郎によって設計されました。
こだわりの美しい外観と珍しい凝った内装は、当時の設計では先駆的なものでした。ヨーロッパの薫りが漂う、雰囲気ある旧呉鎮守府司令長官官舎の特徴を見ていきましょう。
和館と洋館
旧呉鎮守府司令長官官舎は、木造平屋建て造りで洋館と和館からなっています。洋館部は公的な利用、和館は私的な利用で使うものとして機能が分けられていました。
入口は、洋館側の正面玄関と内玄関があります。正面玄関から入ると、応接間や客室で公的利用しやすい構造になっており、内玄関からは和風の炊事場や台所を通って、和館・洋館のどちらにも行ける仕組みです。
プライベートは保たれ、公的利用もできる。しっかりと動線を考えて造られている建物と言えるでしょう。
珍しい金唐紙
旧呉鎮守府司令長官官舎の洋館部の天井や壁には、全国でも珍しい「金唐紙」が使用されています。珍しい「金唐紙」は、繊細な模様が刻まれていて高級感があり気品がある造りに見えます。
じっくり見ないと見過ごす部分ですが、こだわりの造りを見つけるのも楽しいですよ。記念館では、年に2回金唐紙体験ができるワークショップを開催しているため、実際に体験してみるのもおすすめです。
登録有形文化財3つ
入船山記念館は国有財産になり、その周りの建築物は貴重な文化財として登録されています。それぞれに趣があり意味を持つ建築物は、じっくり見るとさまざまな発見があって面白いものですよ。
旧東郷家住宅離れ
この建物は、東郷平八郎が呉鎮守府参謀長として在任中であった時に住んでいた離れ座敷です。昭和55年に移築され現在の位置に建築されました。
入口から入ってすぐ左手にあるこの建物は、休憩所として役目を果たしていたようです。
昔からある日本の和風建築のミニチュア版といったところでしょうか。こぶりな建物は、まさにプライベートで利用されていたと感じられるものでした。
旧高烏砲台火薬庫
明治35年に、音戸の瀬戸に近い休山へと陸軍が設置していた高鳥砲台の跡地より、昭和42年に現在の場所へ移築し、復元したものとなっています。火薬庫の造りは“総石造り”であり、全国的にも珍しい建築物です。
爆発の危険性がある火薬庫であることから、引火しにくい石で造られています。しっかりとした建造物であるべきだという並々ならぬ拘りが感じられる場所です。
旧呉海軍工廠塔時計
大正10年に呉海軍工廠造機部庁舎屋上へ設置されていたもので、戦後になり入船山記念館へと移りました。昭和56年に老朽化した塔時計を整備し、復元したものとなっています。
外観は、北海道の時計台のようなレトロな雰囲気を出しております。また、入船山記念館では、1日に4回(9時・12時・15時・17時)時刻に合わせてさまざまなメロディーが流れます。
これは、呉市内の小中学生が作曲したものを活用しています。毎年応募を募りその年の受賞者が、6月の「時の記念日」に合わせて長官官舎で受賞曲を披露する“ピアノコンサート”を開催しているようです。
芸術性溢れる建造物の中で優雅な音色を聴き、呉の歴史を肌で感じる素敵な機会となるでしょう。
入船山記念館 詳細情報
料金
一般:250円、高校生:150円、小中学生:100円
団体:200円、高校生:120円、小中学生:80円
※呉市内に在住在学の高校生以下、呉市いきいきパス【敬老】をお持ちの方、呉市いきいきパス【障がい者[大人]及び障がい者[小児]】をお持ちの方(介護者一人を含む)、身体障がい者手帳、療育手帳又は障がい者手帳をお持ちの方(介護者一人を含む)、被爆者手帳をお持ちの方、戦傷病者手帳をお持ちの方(介護者一人を含む)、小中高校等の学校行事の引率者、20名以上の団体引率者(添乗員等に限ります)、大和ミュージアム友の会会員証をお持ちの方は全額免除
休業日
毎週火曜日 ※祝日・休日の場合は翌日休館
年末年始(12月29日〜1月3日)
営業時間
9:00-17:00
住所
〒737-0028 広島県呉市幸町4番6号
電話
0823-21-1037
アクセス
・電車
JR「呉駅」から徒歩約13分
・バス
JR「呉駅」前からバスのりば(4)番から 広電バス 坪の内経由〔宮原方面行〕約5分、「入船山公園」下車すぐ、バスのりば(3)番から 広電バス 〔音戸倉橋島方面行〕約5分、「眼鏡橋」下車徒歩約3分
・車
広島方面から:[仁保JCT]→広島呉道路(クレアライン)[呉IC]→入船山記念館
宮島・山口・九州方面から:山陽自動車道[広島東IC]→広島高速1・2号線→[仁保JCT]→広島呉道路(クレアライン)→[呉IC]→入船山記念館
三次・山陰方面:中国自動車道[三次IC]→[広島北JCT]→広島自動車道→[広島JCT]→山陽自動車道→[高屋JCT]→東広島・呉自動車道路(無料)→[阿賀IC]→入船山記念館
中国自動車道[三次IC]→[広島北JCT]→広島自動車道→[広島JCT]→山陽自動車道→[広島東IC]→広島高速1・2号線→[仁保JCT]→広島呉道路(クレアライン)→[呉IC]→入船山記念館
米子自動車道→[落合JCT]→中国自動車道→[北房JCT]→岡山自動車道→[岡山JCT]→山陽自動車道→[倉敷JCT]→山陽自動車道→[高屋JCT]→東広島・呉自動車道路(無料)→[阿賀IC]→入船山記念館
四国方面:瀬戸内しまなみ海道経由:西瀬戸自動車道[今治IC]→[西瀬戸尾道IC]→山陽自動車道[福山西IC]→山陽自動車道→[高屋JCT]→東広島・呉自動車道路(無料)→[阿賀IC]→入船山記念館
瀬戸大橋経由:高松自動車道→[坂出JCT]→瀬戸中央自動車道→[倉敷JCT]→山陽自動車道→[高屋JCT]→東広島・呉自動車道路(無料)→[阿賀IC]→入船山記念館
※公式サイトより引用
駐車場
有
公式ホームページ
http://irifuneyama.com/
※情報は2022年12月時点のものです。最新情報は、ホームページをご参照ください。
まとめ
呉の鎮守の森と呉の歴史を物語る「入船山記念館」は、観光客も訪れますが、学校の課外授業でもよく訪れる場所です。歴史を学べて、計算された長官官舎の造りやこだわりの内装を見て新たな発見ができます。
国重要文化財でもあり貴重な建造物、その周りの有形文化財や豊かな緑の中を歩き、知的時間を過ごせるでしょう。歴史や建築物に興味がある人は、ぜひ足を運んでみてください。