世界文化遺産富士山。
人々は、火の山として畏れ、怒りを鎮めるためにご神体としてあがめ、祈りました。
江戸時代には山頂へ登って祈る“富士講”が大流行し、その安全祈願を込めて麓にいくつもの神社が建てられました。
今回は自家用車を使って富士山の山麓を周りながら、世界文化遺産に登録されている浅間神社を訪ねます。
目次
麓に鎮座し、富士山を鎮める浅間神社
浅間神社は霊験あらたかな神として称えられ、全国各地に建てられていきました。
その数は、1300社以上もあるといわれています。
今回は富士山周辺にあるいくつかの浅間神社をご紹介いたします。
須走登山口の守り神「東口本宮冨士浅間神社」
東名高速道路御殿場ICから国道138号線を山中湖方面に20分ほど、有料道路東富士五湖道路入口の分岐を横目に国道を走ると、すぐに「東口本宮冨士浅間神社(ひがしぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)」あります。
御殿場市と山中湖の中間あたりに位置し、富士山の須走登山道の起点にもなっています。
(現在一般的に使用されている登山口は、国道から富士山5合目まで上れる自動車道“ふじあざみライン”の終点、須走口5合目が起点です)
東口本宮冨士浅間神社は富士山麓の深い森の中にあり、鳥居から神門(随神門)をくぐりると、社殿まで一直線に参道が続いています。
鳥居を入って左側には根が地上に出ているモミの木があり、曲がりくねった根は小さい子どもがくぐれるほど。
周囲のカシやブナの木と根が絡み合っている様子から、“縁結びの木”として親しまれています。
境内入口付近には富士山の湧き水が流れ落ちる小さな滝「信しげの滝」があり、周囲の森は野鳥の天国です。
吉田の火祭り”で有名な「北口本宮冨士浅間神社」
次に向かうのは富士吉田市にある「北口本宮冨士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)」です。
東富士五湖道路で山中湖方面に15分ほど走り、山中ICで降ります。
その後国道138号線を富士吉田市方面へ5分ほどで到着です。
「北口本宮冨士浅間神社」は781年にあった富士山大噴火のあと建立されました。
両側に大きな杉と石灯籠が並んだ長い参道の奥に、国の重要文化財に指定されている本殿があります。
境内にはほかにも歴史的価値の高い建物が並んでいます。
以前は富士山の吉田登山口の起点として、多くの登山客が登山前の安全祈願に訪れていましたが、現在は標高2300m付近の富士スバルライン5合目が登山口となっているため、参拝者は少ないようです。
ただ神社から5合目までの登山道は今も残っていて、5合目から1合目(北口本宮冨士浅間神社)までを歩いて降りる“富士山下山ツアー”が人気だとか。
ツアーガイド付きで全く登りのない山歩き。
安全安心、見所もいっぱいあるようなので一度参加してみようかな。
また北口本宮冨士浅間神社で有名なのが、8月下旬の開催される日本の代表的な奇祭“吉田の火祭り”。
北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社の両社で行われる秋祭りで、この時期にはたくさんの観光客で賑わいます。
※昨年2021年の吉田の火祭りは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、規模を縮小して行われました。2022年の開催状況は、下記の公式サイトよりご確認ください。
河口湖を守る「河口湖浅間神社」
富士吉田市で当地のソウルフード“吉田のうどん(吉田うどん)”で腹ごしらえ。
太くてとてもコシのあるうどんです。
富士吉田市には50軒以上のうどん屋さんがあるそうで、出汁は醤油ベースや味噌ベースなどいろいろ。具には野菜のほか馬肉が入ることが多いとのことです。
富士吉田市から河口湖へ向かいます。
湖畔から山梨県へ向かう国道137号線を車で5分ほど向かったところにあるのが「河口湖浅間神社(かわぐちこあさまじんじゃ)」です。
864年に起きた富士山大噴火を鎮めるために建立されたといわれています。
境内には“7本杉” と呼ばれる樹齢1200年の大杉が7本あり、ご神木になっています。
本殿に掲げられた「大本魂(おおもとだま)」という額の後ろに木造の猿が隠れていて、角度によってその一部が見えます。
その姿を拝めば一層のご利益が得られるそうです。探してみてください。
境内はじめ参道も杉や樫の木などに覆われ、河口湖の喧噪とは無縁の、神聖な雰囲気が漂います。
参拝自由
住所
山梨県南都留郡富士河口湖町河口1
URL
https://kawaguchiko.net/shinto-shrine/kawaguchiasama-jinja/
富士山最古の「冨士御室浅間神社」
「河口湖浅間神社」から河口湖へ戻り、南岸に向かいます。
「冨士御室浅間神社(ふじおむろせんげんじんじゃ)」は富士山最古といわれる神社です。
本宮は699年富士山2合目に藤原義忠によって祀られました。
その後の度々の噴火などにより本殿は喪失、破壊を繰り返し、その都度再建されてきました。
現在の建物は1612年に再建されたものです。
本宮の場所は標高1700メートルほどで、吉田登山道(旧道)の途中にあります。
この場所は気象条件が厳しく、登山者もほとんどいないため、このままでは荒廃してしまうとの判断から、本殿は里宮の境内に1974年に移築されました。
里宮は本宮にお参りするのが大変なため、本宮の代わりとして958年河口湖畔に建立されました。
現在の里宮には、元々の里宮本殿と、本宮から移築した本殿が建っています(写真は里宮本殿)。
2合目にある河口湖浅間神社本来の本宮は、現在は本宮しての役目を終え、奥宮としてひっそりと佇んでいます。
富士山の西麓にある2つの変わった浅間神社
遙拝所だけの「山宮浅間神社」
河口湖からは富士宮市にある3つの浅間神社に向かいます。
山宮浅間神社までは1時間ほどかかるドライブです。河口湖から県道富士宮鳴沢線を富士宮方面に走ります。
富士パノラマラインと呼ばれる国道138号線でもOKです。
左側には富士山が裾野まで広がっています。特に朝霧高原からの眺めは絶景です。
白糸の滝など観光スポットも多くありますが、今日は一気に富士宮の浅間神社へ向かいます。
「山宮浅間神社(やまみやせんげんじんじゃ)」の創建年代は不明ですが、「富士山本宮浅間大社」の前身といわれている神社です。
ここに社務所はありますが、本殿や拝殿といった建物はありません。
富士山が正面に拝める遙拝所(ようはいじょ)があるだけです。
大昔の人々が富士山の噴火を鎮めるために祈りを捧げた場所で、神社という形ができる前の、古い信仰の形です。
現在は遙拝所の中には入れませんが、正面には美しい富士山の姿が望めます。
住所
静岡県富士宮市山宮740
参拝料
無料
山宮浅間神社案内所は土・日・祝日 (10:00~15:00) のみ開館
開館時は、富士山世界遺産ガイドが常駐
※年末年始(12/29~1/3)は閉館
※情報は2022年6月時点のものです。最新情報はホームページをご参照ください。
江戸時代まではお寺と同居していた村山浅間神社
ここは、旧大宮・村山登山道(富士宮登山道)の守り神として、富士山へ登る修験道の中心を担っていました。
明治時代になるまでは、興法寺というお寺の中にあり、今でも境内には旧本堂(富士山興法寺大日堂)があり、仏像が祀られています。
江戸時代まで行われていた神仏習合(神様と仏様を同居させる制度)時代の名残が色濃く残っている珍しい神社です。
大宮・村山登山道は明治時代に新しい登山道ができたため廃止されています。
住所
静岡県富士宮市村山1151
参拝料
無料
村山浅間神社案内所は土・日・祝日 (10:00~15:00) のみ開館
開館時は、富士山世界遺産ガイドが常駐
※年末年始(12/29~1/3)は閉館
※情報は2022年6月時点のものです。最新情報はホームページをご参照ください。
富士山8合目以上を所有する「富士山本宮浅間大社」
全国1300社ある浅間神社の総本社
最後に訪れたのが静岡県富士宮市にある「富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)」です。
「山宮浅間神社」から通称“登山道”(富士宮登山道。現在は富士宮口5合目が起点)を車で15分ほどのところにあります。
「富士山本宮浅間大社」は全国に1300社ほどある浅間神社(せんげんじんじゃ)の総本社です。
富士山をご神体とする神社ですが、名称は浅間大社となっています。
その理由は“浅間(せんげん、あさま)”が古来火山のことを表す言葉だからだそうです。
ご祭神の木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)は、富士山の噴火を鎮めたといわれています。
別名浅間大神(あさまのおおかみ)と呼ばれており、女性の神様です。
この木花之佐久夜毘売命が3人の子を産んだことから、浅間大社には家庭円満・安産・子安にご利益があるとされています。
また、五穀豊穣や水徳の守護神でもあります。
木花という名前から桜が御神木です。
住所
静岡県富士宮市宮町1-1
開門時間
11月~2月 6:00~19:00
3月・10月 5:30~19:30
4月~9月 5:00~20:00
散策自由
URL
http://fuji-hongu.or.jp/sengen/
※情報は2022年6月時点のものです。最新情報はホームページをご参照ください。
山頂に2つの社
引用元:富士宮市ダウロード素材集
「富士山本宮浅間大社」には富士山頂に2つの社が鎮座しています。
ひとつは富士宮登山口の終点(山頂)にある「奥宮(おくみや)」です。
もう一つは、須走(すばしり)登山口、吉田口、河口湖口の山頂部分にある、奥社の末社である「久須神社(くすじんじゃ)」です。
富士山の8合目以上は「富士山本宮浅間大社」の境内になっており、土地所有者は富士山総宮浅間大社です。
また、本来静岡県と山梨県の県境は富士山頂を通っているはずなのですが、山頂部分から東側の斜面には県境が決められていません。どうなっているのでしょうね。
鳥居と富士山の美しいコラボ
浅間大社の境内には朱塗りの大きな拝殿と、その奥に一段高く本殿(国の重要文化財)があります。
周りは500本あまりの桜で囲まれ、春は多くの人で賑わいます。
入口の大鳥居や、そこから本殿に向かう参道、第二鳥居からは富士山の美しい姿を眺めることができます。
しかし、意外なことに境内からはほとんど見えません。
富士登山者の霊水、「湧玉池」
拝殿から東脇門を出ると大きな池があります。
「湧玉池(わくたまいけ)」といい、富士山に降った雪や雨が長い年月をかけて湧き出したものです。
昔から人々はこの霊水で禊ぎ(みそぎ)をしてから富士登山に向かいました。
水源の上には「水屋神社」が祀られていて、取水場が設置されていて、自由に霊水を飲むことができます。
特別天然記念物に指定されていて、パワースポットとしても人気があります。
今回の世界文化遺産浅間神社巡りはここで終わりです。
帰りにちょっとお腹がすいたので、富士宮名物“富士宮やきそば”を食べて帰ります。
まとめ
駆け足で富士山周辺の浅間神社を巡ってきましたが、同じ浅間神社でもおのおの個性があり、次は一つひとつの神社とその周辺をゆっくり巡りたいと思いました。
巡った浅間神社はすべて世界文化遺産富士山の構成資産ですが、このほかにも富士五湖、忍野八海や白糸ノ滝、三保松原なども構成資産として認定されています。
また世界遺産には含まれませんでしたが、富士山周辺には青木ヶ原樹海や風穴・氷穴、コウモリ穴などパワースポットも多くあります。
是非訪れてそのパワーを実感してみてくださいね。