地域住民に愛される大頭(おおがしら)神社

広島 #散歩 #神社 #
2022.01.27

広島県と言うと世界遺産の厳島神社が有名ですが、宮島の対岸である廿日市市にも豊かな森の中に2本の滝が流れる癒しの空間があります。厳島神社に行くには、JR宮島口駅で下車してフェリーに乗り換えますが、大頭神社に行くにはそのまま列車に乗って、2つ先のJR大野浦駅で下車します。JR宮島口駅とJR大野浦駅の間は5分程度です。JR大野浦駅からタクシーで5分程度、歩いても20分程度の距離にあります。滝がある部分から突然山が始まる感じなので、ほとんど平地を歩きます。この町はとても静かで、歩きながらジョウビタキ、メジロ、ヒヨドリ、ハト、スズメ、カラスなど、色々な鳥や虫の鳴き声が聞こえてきます。

大頭神社の名前の由来

『日本書紀』の伊耶那岐神・伊耶那美神の神生みによると、伊耶那美神は火の神である火之迦具土神を産んだとき、陰部を焼かれて死んでしまいます。怒った伊耶那岐神は十拳の剣を抜いて、火之迦具土神の頸を斬り落とします。そして、殺された火之迦具土神の体の各部位から別の神々が生まれます。頭から大山祇命、身中が中山祇命、手が麓山祇命、腰が正勝山祇命、腹が奥山祇など様々な神が生まれます。

大頭神社の御祭神の一柱が山の神である大山祇命です。頭から生まれた神にちなんで、大頭神社と称されるようになりました。ちなみに、体の別の部位から生まれた神々は、大頭神社の境外社である四末社にお祀りされています。

厳島神社の摂社

大頭神社の御祭神は三柱で、その内の一柱が厳島神社初代神職である佐伯鞍職命です。佐伯鞍職は夢で神勅を受け、高天原から連れてきた神鴉(ごがらす)の先導のもと、市杵島姫命らと共に宮島を巡り、潮の満ち引きする現在の場所を御鎮座地として選ばれました。推古天皇の即位の年の593年のことだと伝えられています。

その10年後、603年に大頭神社は厳島神社の摂社として創建されたと伝えられ、古くは嚴島兼帯七社の一社でした。大頭神社と厳島神社は、神鴉を通じて今でも深くつながっています。

厳島神社の末社 養父崎神社の御烏喰式(おとぐいしき)

養父崎浦神社の御祭神は霊鴉神(ごがらすのかみ)です。養父崎浦の沖に、御幣と粢団子(しとぎだんご)を供えると、神烏が出てきて、団子をくわえて養父崎浦神社に戻っていきます。団子を持って帰る年と持って帰らない年があるようですが、御神事に参加すると福を授かります。この神烏が親子で対岸の大頭神社まで飛んでいき、「四鳥(しちょう)の別れ」という御神事を行います。

大頭神社の四鳥の別れ

大頭神社の手水舎の側に別鴉橋(べつあはし)がかかっており、石碑に謂れが刻んであります。親鳥2羽は雌雄の子鳥2羽とここで分かれ、紀州熊野へ飛んでいきます。子鳥の方は宮島の弥山(みせん)に帰り、来年の御烏喰式に参加します。つまり、神烏の世代交代の儀式がこの地で行われます。

地域コミュニティの場

大頭神社は他の神社と違って不思議な空間です。雄滝も雌滝も近くまで自由に行けます。特に雄滝は人気で、地元の幼稚園がプール替わりに使ったり、夏休みに水着で子供川遊びをしたり、詩吟のグループが滝の側で練習したり、バーベキューをしたりと地域の公園よりも活用されています。雄滝まで散歩に来る人も多く、常に人の出入りがあります。

地元の人は「ゴミを持ち帰る」というマナーを守って利用しているため、ゴミを目にすることもあまりありません。境内の中ほどにトイレもあるので、安心して利用できます。

裏山を登って、毛保川の上流へ

毛保川の上流域でも川遊びが楽しめます。滝の前で遊ぶ雄滝とは違って、上流域は静かです。雄滝から5分程度で上流域に行けます。

川遊びをすると、ヤゴ、オニヤンマ、ヘビトンボ、蛍、メダカ、カエル(オタマジャクシ)、川エビなど多様な生物が観察できます。川砂は細かいのですが、普段から足の裏を鍛えておかないとかなり痛いです。ビーチサンダル、タオル、レジャーシートなどは必需品です。

また、上流域には夏季だけオープンする鮎の釣り堀もあります。自分で釣った鮎をその場で調理してもらえるので、美味しさも格別です。

山派の方にもオススメ

まとめ

登山が好きな方は、雄滝の側の裏山を登って、行者山、城山、経小屋山などへ行かれますが、初心者コースとは言えません。獣道を通ったり、勾配がきつかったり、倒木があったりするので、万一に備え必ずグループで行きましょう。

大頭神社は、妹背の滝があるためか、神社とコミュニティ広場とアウトドアが組み合わさったような空間です。ぜひ自分なりの楽しみ方を見つけてください。